―――7.守りたいから

 紆余曲折。
 太陽が南中を迎える寸前の時刻、アルトリアとライダーはどうにかして商店街に辿り着くことが出来た。
 どうにか、というのはつまり。
「……ふと思ったのですが」
「なんですか。つまらない質問なら棄却しますが」
「重要なこと。アルトリア、貴女は後ろにこうして人を乗せたことはありますか?」
「――――――」
 まあそういうわけで。
 兎にも角にも辿り着いた二人は、商店街をうろつくことにした。
 お互い何も言わず、アルトリアも目的を言うことなく、ライダーが勝手についてきたのだから。
 商店街は意外にも人の姿が少なかった。
 元々、娯楽施設がない深山の商店街は、平日であるこの日では人影がほとんどないにも頷けるだろう。
 ゆえに風貌、容貌が目立つ二人には一種の穴場的存在になっていた。誰かに奇異の目で見られることもなく、妙に絡まれることもない。
 だからこそこうして悠然と構えることが出来る。
 しかし、いつまでもこうして歩いていくわけにもいかない。
 そうしている間にもアルトリアの腹は刻一刻と空腹に近づいているのだ。
 ここで昼食をとるのならばいいのだが、未だその注文すら満足に出来ない過去の英雄たちは藤村組でご厄介になるほかがないのである。
 一度アルトリアとライダーで昼食を作ったことがあるが、居合わせたイリヤが「……何、これ」と眉間に皺を寄せたので以降作らなくなった。王と支配する女、料理など不要の環境が今になって恥じ始めた。
 カラカラと自転車を手押しながら、見渡すアルトリアをライダーは呆れた顔で溜息を吐いた。
「どうするのです。こうしてただ歩いているだけでは昼食に間に合いません。見切りを付けて諦めるか、早く決めるかどっちかにしてください」
 そう言うと首を軽く傾ける。慣れぬ髪形のせいかどうも落ち着かないらしい。
 なら解けと思うのだが、これがまた難しい。アルトリアは軽々とやっけのけたが、その造りがまだよくわからない彼女にとれば解くにも四苦八苦する。
 そのような苦労を知る由もないアルトリアは、つんと澄ました表情で辺りを見回していた。
 見向きもしないその態度にライダーは肩を落とす。
 と。
 無言でアルトリアは歩みを止めた。
 怪訝に思ったライダーも止まり、その目線の先にある店を見る。
 そこは、もし幼少期を日本で迎えていたならば懐かしさを覚えたであろう駄菓子屋だった。
 ライダーはもちろん幼い日々を極東の地で迎えたことなどない。だが、その木造の洋装に不思議と心が温かくなってきた。
 そうして呆けているとアルトリアは店前に並んでいる駄菓子には目もくれず奥へと進んでいく。
 え、と声を上げる間もなく彼女はどんどん奥へと向かっていく。
 やがて、その足は止まり、その目線は一人の老婆へと向けられていた。
 老婆は浴びていた日の光が遮られたのに気付いてか、ゆっくりと目を開き、そして絹糸の髪を見た。
「ああ、アルトリアさんかい」
 そう言って、笑みを浮かべた。アルトリアはそれに頷く。
 あまりに慣れた様にライダーはどう反応することも出来ず、ただ呆然と立ち尽くしていただけだった。


「アルトリアさんはねぇ、わたしみたいな駄菓子屋によく通ってくれるんだよ。それだけでも嬉しいっていうのに、暇なわたしの話し相手もしてくれるんだから、これほど嬉しいことはないよ」
 その老婆は年齢に似合わず若々しい笑顔で、ライダーに話した。
 どうやら商店街に行くたびにこの駄菓子屋へ足繁く通っていたようだ。思えば、いつの間にかアルトリアがいなくなっていた日もあったことをライダーが思い出す。
「いえ、貴女のお話は未だわからない日本の風習について勉強になる。それに――――」
 言うと、お茶請けに置かれたせんべいに齧り付く。
「ここで売られているお菓子は美味しい」
 パリパリと軽快な音を鳴らしながら頬張るその姿は、子供同然。
 既にその腹の中には二枚も同じものが入っている。
「そういってもらえると嬉しいよ。何せ、こんな造りだからねぇ。あまり人も寄ってこないのさ」
 老婆はふっと店内を見る。
 今はもう珍しくなった駄菓子屋。今、座っている板張りの踏み台に続く道沿いには様々な駄菓子が並べられていた。中にはビンにつめられているものもある。全て、新品同様である。
 その数多い種類の中、まだ数がそれほど減っていないことからこの店の経営状況は窺える。
「……それをわかっていながらも貴女は続けているのですね」
 理解できません、とばかりに彼女は差し出された煎餅を齧る。その表情は呆れを通り越して哀れへ。
 まさか、それをアルトリアが見逃すわけがない。
「ライダー!」
 老婆の手前、武装するわけにもいかず、視線だけで対立する。
 ライダーもわかっているのだろう、鼻を鳴らすと視線をそらし、視界に入れないようにする。
 静謐で、しかし緊迫した空気が流れてる。
 が、老婆の笑みは止むことはなかった。
「ライダー、さん、と言いましたか」
「…………」
「あなたのいうこともわかりますよ。こんなに廃れた店なら早くたたんでしまえばいい。こんなおばあちゃんは家でゆっくりしていたほうがいい」
 ゆっくりと、諭すように、悟るように言葉を紡ぐ。
 視界はゆっくりと自分が長年経営してきた店の中へと。
 その先に一体、何を見ているのだろうか。優しげなその瞳の奥に広がるのは。
 廃れてしまった現状か。
 はたまた賑やかだった昔の光景か。
 それとも、
「けど、ここでやめてしまったら誰がこの"子"たちの面倒を見るのかねぇ」
 その視線は現状でも過去の光景でもなく、変わらぬ愛を注ぐ菓子たちへと向けられていた。
 アルトリアは老婆の表情に心が解かれていく気分になった。その笑み、その優しさ、その包容力。
 いつかの自分を見ている気分。
 いつかの誰かを見ている気分。
 いつもの誰かを見ている気分。
 そこで、アルトリアは本当に彼女に惹かれる理由を理解した。
 母を、感じたのだ、と。
「わたしはいなくなってもいいさ。だけどね、大切なこの子たちの行方を最後まで見守っていかないと後が怖いんだよ。もう何年もやっているからね。どうも愛着が湧いちゃっててねぇ」
 茶を啜る。ゆっくり、しかしたどたどしく。
 笑顔だけは若くとも、体の機能はおいつかない。確実に死へと向かっているのだ。
「この子たちはもう、わたしの子供だよ。大切な、大切な……」
 アルトリアは頷く。
 大切な。
 大切な人を想う。
 子供のような信念を持ち、子供のような振る舞いをする愛しい少年。
 彼が生涯を尽きるまで自分は最期まで剣でいると誓った。それは終焉まで見届けるという意味である。
 大切だから。
 護っていきたいから。
 見守っていきたいから。
「ええ、貴女のいうことはとてもわかる」
 本当に、最期まで見守っていかないと何をするかわからない。
 そんな、少年だから。
 今は、手放してはならない。
「アルトリアさんは大切に想っている人がいるんだねぇ」
 再び頷く。
「なら、目を離してはいけないよ。わたしは―――一度、その経験を味わってしまったからねぇ」
 アルトリアに笑みを浮かべると、老婆は虚空を眺める。
 その老婆に何があったか、彼女らは知る由もない。むしろ知ってはいけない領域だろう。
 果たせなかった想いを、今、果たしているのだから。
 再度、頷く。
「お気遣いありがとうございます」
 そう、"母"に微笑む。
「大切に想う気持ち、学ばさせていただきました」




 ―――8.邂逅

「―――――――」
 ライダーは一人、外に出る。
 思いのほか、駄菓子屋に居たらしく、太陽は南中より傾いている。
 どうやら藤村での食事は諦めた方がよさそうだ。用意はしてくれるだろうが、あまり好意に甘えるのも引けるものがある。
 まったく、と息を吐く。
 その溜息の相手であるアルトリアは、未だ老婆と談笑している。いやむしろアルトリアが真摯に聞いていると言ったほうがよいか。
 どちらにせよ、あまりに和やかな空気は肌に合わないライダーは不審に想われない程度に外に出たのだ。
 疲れた、と思う。
 明るい環境はやっと最近慣れてきたところだ。
 聖杯戦争では毎日が緊張の連続、生死の境目を行ったり来たり。
 そして過去。ライダー――真名、メドゥーサ――は光のない暗い神殿で生涯を過ごした。
 半人半神だの化物だの魔物だの罵られ、海神ポセイドンに魅入られたからと嫌われ、美しい髪ゆえに殺された。
 彼女の一生はむしろ明るい世界とは正反対。
 ゆっくりと眼鏡に手をかける。
 石化の魔眼。ライダーが持つ、生まれついての能力であり、自分でも抑えることが出来ない魔術。
 それを外部から抑えるのが、この魔眼殺しの眼鏡――実際、魔術効力を持っているのはレンズの方であるが――である。
 もし、これを外せば。
 そのようなことは―――今、地面に落とされ、しかも微かに震えている鳥の姿を見れば一目瞭然だ。
 何をされたのか理解不能な鳥。身動きが取れない鳥。突然起こったそれに戸惑うだけの鳥。
 たった少しの行動だけでそれは発動する。自己制御不可なのだ。
 これでは歩く殺人兵器と変わらない。
 それが今や、至って普通の人間みたいになろうとは。聖杯戦争時では考えられないことだった。
 原因を作ってくれたのは間桐桜の想い。結果を作ってくれたのは遠坂凛の心意気。
 それを拒否せず、受け取る理由になったのは士郎の「別にライダーは嫌いじゃないぞ」という言葉だったりする。
「わ、我ながら情けない理由……」
 結局、衛宮士郎の隣は騎士王にとられたわけではあるが。
 それでもライダーは嬉しかった。
 負の感情に満ちていたメドゥーサには味わえなかった、心から笑えるなどといった様々な感情が出来たからだ。
 時に、士郎の寝込みを襲おうと模索していたのをアルトリアに憤慨され、仕返しをしてみたり。
 時に、桜との交友に笑みを浮かべ、実の姉である凛からの視線が痛かったり。
 時に、イリヤから素直な質問を受け、仕方なく答えてみたり。
 時に、大河の突飛な行動に目を見開かされたり。
 そう、それはもう単なるイベントではない、日常と化していた。
 家族としての日々。
 もうそれが形成されてしまっていたのだ。体にも、心にも。
「それほど大げさなものではないですが」
 眼鏡をかける。
 同時に、解除、と告げると鳥は何事もなかったように飛翔していく。
「……あなたには申し訳ない仕打ちをしてしまいましたね」
 通じるわけがないだろうが、ライダーはぽつりと呟く。
 その台詞に思わず「ああ、これも可笑しい変化ですね」と口を押さえて笑みを浮かべてしまった。
 妖美な嗤いではなく、純粋無垢な微笑み。
 少女としての笑みだったことは、誰も知る由もなかった。

 直後、その笑みが、凍った。

 何を見たわけでもない。何かを聞いたわけでもない。
 五感で感じ取れるものではない、これは―――第六感。己が己に注意を促している。
 身動きをとらず、研ぎ澄まされた第六感で辺りを探る。
 まだ何が己に忠告しているのかわからないこの状況で無駄に動けば、それは確実に悪循環を巡る。
 冷静に対処するには慣れている。
 もし、自分に敵意や殺意など感情を持つ、害する相手であれば即刻排除せざるを得ない。
 ―――家族の日々を壊すものならば。
 幸いというべきか、そのような災害をもたらす感情を感じることはなかった。
 だが確実に反応はある。微弱だが、魔力の。
 スッと目だけを動かして、辺りを見渡す。

 はたして、ソレは存在した。

 まだ齢十代前半であろう小柄な矮躯。その身体を覆うのは黒い布切れで、頭まですっぽり埋まっていて表情は窺えない。見えるのはせいぜい口から下ぐらいであり、その辺りまで流れる紅の髪が暗い雰囲気の少女に明るみを出していた。
 その気配はまさしく無。異臭――嗅覚の臭いではなく感覚の臭い――を放っているのにも関わらず、それは明らかに無臭なのである。
 ゆえに誰も気付かない。多分、今少女に気付いているのはライダーぐらいのものだろう。
 それくらい薄弱。彼女の気迫は薄く、まるでないようだった。
 少女は立ち止まり、空を眺めていた。
 蒼穹の空。太陽の方向。
 ―――鳥が飛翔した場所を。
(まさか、見られた?)
 ライダーは微かに苦渋の色を顔に浮かべる。
 石化にした鳥を解除し、自由にした。その鳥は何事もなかったように飛び立った。
 もしそれを、見られたとしたら。
 だが、それでも相手側に敵意や殺意は感じられない。
 だからこそ恐ろしい。
 何を仕出かすかわからないモノほど、感情を揺るがせるものはない。
 もう少し、様子を窺おうとライダーが一点に集中したその時、少女はゆっくりと動いた。
 ライダーの方へ、顔を向けたのだ。
 凍った。
 石化の魔眼が判明された時点で予想は出来たはずなのに、心臓の鼓動は早まっている。
 背筋に冷や汗が流れ、呼吸は自然と止まる。
 どうすることも出来なかった。
 いや、どうするかをまだ迷っていたのだ。
 悪意を感じられない彼女が、本当に自分の敵になるのか、と。
 そうしている間にも少女の動きは止まらず、思わぬ行動に出た。
 被っているフードを取り払ったのだ。
「な、」
 思わず声が漏れる。今まで隠していたものを曝け出したのだ。驚かないわけはないだろう。
 視線がぶつかる。
 その表情はまるで冷徹だった。無表情でもいい。
 目鼻など顔を構成する部分が全て筋の通った顔立ち。豹のような鋭い琥珀色の瞳は、まるで魔眼でも使っているように見ているものを魅了させる。首までのびる夕焼け色の髪は青空の色と相反してその美しさを浮き出させていた。
 日本人離れしたその容貌、幼いながらも強い意志を感じるそれはまさしく畏怖すべき存在。
 まるで―――

「……違う」

 凛と鳴る声色。
 年齢相応のその声に猛獣の中にも良心が芽生えているようで、ライダーは若干心を緩める。
 だからといって完全に気を許したわけではない。
 少女は見た目もあってか、イリヤに似ていた。彼女も幼いながらに自分の存在意義を主張している。大人の中に混ざる子供。しかし子供ながら大人。強い炎を抱えて、まるで手のひらで躍らせるように。
 似ていないといえば『炎』の部分。
 少女の属性は燃え盛る『炎』ではない、そう『氷』なのだ。
 だから決定的にイリヤに似ているとは言い難い。
 ―――では、誰に似ている?
 その問いに答える者はいなかった。
 何故なら、瞬間。
 少女は消えたのだから。
 ライダーは身体が震えた。舌打ちをすると同時に身体全域に緊急稼動を命じ、一瞬のうちに五感を取り戻すと、辺りを見渡す。
 しかしその姿はない。
 無臭で薄弱だった気配は透明に消え、ライダーにも感知できなくなってしまった。
「なにが」
 何が起こったのか、とライダーは呟いた。
 そこには閑静としている商店街と、不思議がる顔で出てきたアルトリアの姿の他に人影はなかった。

「ところで何故棒アイスを咥えてますか」
「ふぉいひぃでふよ?」




 ―――9.昼休みの逃走劇

 三年の廊下はいつにも増して賑やかだった、と誰もが後世に残したい日のこと。
「遠坂先輩、どいてください! でないと―――」
「でないと? どうするつもりなのかしら、間桐さん?」
 その原因を作っている遠坂凛と間桐桜は一目散にある教室を目指していた。
 ある教室、といっても傍から眺めている生徒たちはどこへ向かっているのかは周知の事実。
「遠坂先輩はいつも先輩と食べているんですから、今日ぐらいは後輩の私に譲ってくれても!」
「桜。貴女って本当に士郎となるとキャラ変わるわね。どうでもいいけど、先に言ったのは私なんだし、それに一つとて年長者の私を敬って譲りなさい」
「譲ってください!」
「嫌よ」
 凛とて本当なら桜に譲ってやりたい気分もある。何せ実の妹である。最近になって妹煩悩に気付いた彼女は、どうにかして接点を持とうと、こうして争う振りをしているのである。
 いじめている、といえば終わりだが。
 どうこうしている間にも、その競り合いは目的の場所へ辿り着くことになる。
 衛宮士郎、その人がいる教室へ。
 しかし、

「衛宮ぁ? 残念ながらいないね」

 本人は既に不在だった。
「いない? それはどういうことかしら、間桐くん」
「どうもこうもないだろ。いないものはいないさ」
「兄さん、それは本当ですか?」
「……なんだい、桜まで疑うのか。なら自分の目で見てみるといいさ」
 そう言うと、士郎のクラスメイトであり、桜の義兄である間桐慎二は身を引き、親指でその先を指した。
 士郎の席は二人とも知っていた。だから、そこに彼が居ないのもすぐわかった。
「どこに行ったかはわかる?」
 冷静に、限りなく冷静に凛は問う。
「さぁ? 僕は知らないね。にしても、遠坂も桜も衛宮のどこがいいんだか」
 やれやれ、と肩を竦める彼に以前のような刺々しい雰囲気はない。
 友好的とも言い難いが。
「いいわ。それなら柳洞君は? 彼なら衛宮君の居場所くらい知っていそうだけれど」
「…………更に知らないね。柳洞のことなんて、僕が知っていると思っているのかい?」
「兄さんは生徒会長のことをあまりよく思っていませんから」
「成程。問題児と生徒会長は気が合わないってね」
 思わず嘆息を漏らす凛に「お前も同様だろ、優等生さんよ」と悪態を吐く慎二。
「じゃあ」
「つまり」
 ぎり、と足を踏みしめると二人はお互い背を合わせて全く逆の方向を見る。
 もうこうなったら凛といえど士郎を追い詰める他ない。例え、冗談の領域だったとしても彼は遠坂凛の約束を破ったのである。
 聖杯戦争で幾度も重ねてきた会合で学んだはずの遠坂凛という少女を、そういう態度で臨むのならば容赦はしない。
 逆に桜も腹が立っていた。自分から逃げるという行為に。
 信頼していた相手から避けられるということに、起こった感情は悲哀よりも憤怒。
 両者ともに捕まえたらどうしてくれようか、という黒き衝動に駆られている。
 は、と慎二が疑問の声を上げるより早く。

「逃げたな、士郎ーーーーーー!」
「先輩、逃げましたね!」

 駆け出した。
 嵐のように両者、正反対の方向へ走り去る姿を慎二は呆然と立ち尽くして見ていた。
「衛宮……キミは僕以上に罪作りなのかもしれないな」
「お前のは単なる女ったらしなだけだろう。間桐」
 痛い一言を告げて、美綴綾子は友人のいる教室へと足を踏み入れた。
 風が流れる。
「ハッ、なにもわかっていないのはどこのどいつだ」
 否定できない綾子の言葉だったが、全く反省の色を見せることはない間桐慎二だった。




 逃走劇はこうして幕を開ける。








つづいたりつづかなかったり

[あとがき]
そんなわけでシリアス路線かと思わせて、最後に落とす。まったく読者泣かせのFD第3話をお送りしました。
見ていただければわかるように、このお話が一つの区切り目です。
衛宮家族紹介と共に、家族の内面、心境を送るのがここまでです。
まあ、まだ先もそういった展開(藤ねえとかイリヤが不十分)もあると思いますがー。
全体の流れとしてはこれが序章と考えていただければいいかと。

こうして連載形式にしているFDですが、短編としてみる方が面白いのかもしれません。
繋がりはあるものの、ピリオドごとに話は完結しているわけですから。
三つの短編が一つになったお徳セット。
美味しいかどうかはお客様次第です。

さて、次回は―――まあそれなりに。

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