"delicate blue light -すべては一つの物語"
原作:とむはち 執筆:Arika

第一楽章  出会いは淡い海の色






 そこは春の陽射しの暖かな場所だった。
 その場所に一人の少女が歩いていた。
 触り心地が良さそうな腰まで伸びた、まるで海のような淡い髪の毛、透き通り見た者は異性は愚か同性まで魅了しそうなオレンジの瞳。
 それだけでも道行く人々が振り返る容姿だが今の少女にはそれよりも人目を引く部分があった。
 ……翼があるのだ。本来人間なら腕がある部分に腕の代わりに天使の様な純白の白い翼があるのだ。
 少女は歩きながら辺りを見渡し目を閉じ辺りの気配を探った。
 まるで目に見えない何かを確かめるように確認し始めた。
 もう何回、何十回やったのか覚えてない、だけどやらなくては危険が迫っているか分からないから何十回、もしかしたら何百回目になるかもしれない行為を終了し目を開けた。
 ……追手の気配はない。
 目的地を決めずに逃げ回ったのが良かったのかもしれない。
 さすがに海と空で地球を"何周"もすれば追いかけて来れないだろう。
 追手がない事に安心し少女は歌を紡ぎだす。

「―私に腕をください
  翼の代わりにください
  人にある物をください
  人になるためにください」

 少女の声は、明るく透き通る綺麗な声だった。
 ワンフレ−ズを歌い終わると少女には翼ではなく、歌のとおり腕が出来ていた。
 人間ではなく少女、セイレ−ンと呼ばれる種族が使える魔術、歌術を使ったのだ。
 少女は先程まで翼だった自分の腕を見て満足そうに眺めた。
 ――パチパチパチ
 突然後ろから手を叩く音が聞こえた。
 少女は驚いて後ろを振り返った。
「ロ−ラ?」
 そこには少女が追いかけられる原因になったある人物に仕える従者が立っていた。
「お久しぶりですねエル様」
 ロ−ラと呼ばれた女性は恭しく一礼をした。
「何しに来たのよ? いっとくけど、ワタシは恋愛がしたいの、だ・か・ら・バルと結婚する気は全く無いし家にも帰らないからね」
 少女エルは刺のある言葉で返した。
 そもそもエルが追いかけられた原因は、エルがバルと言った人物と結婚させられそうになった事によるものだ。
 エルはそれが嫌で家出をしたのだが、親はどうしても結婚させたいらしく、その為追手が掛かったのだ。
 そしてエルが住んで居た所より暖かい、ここへ辿り着いたのだ。
「そんなにラティル様を嫌わないで下さい、後で宥めるの大変なんですから」
 ロ−ラは困ったように言ったが質問の応えは返してない。
「別に嫌ってないわよ、ただオカマと結婚したくないだけ」
「ああ、またそうゆう事を、傷つきますよラティル様、あの方はご病気なんですから」
 ロ−ラは自分の主人の事なのに事も無げに言った。
「ロ−ラの方がよっぽど酷いこと言ってるじゃない」
 エルは呆れながら言い返す。
「そんな事は無いですよ。それにしても流石ですねエル様」
「なにが?」
「”今”のラティル様は”五周”でもやっとなのにエル様は”余裕で八週”も出来るなんて、……流石、堕とされた歌姫ですね」
 最後の方は呟く様に言ったのでエルの耳には届かなかった。
「そりゃあ、体力だけは自信あるからね」
 エルは聞こえなかった部分も気にせず。えっへんと、胸を張る様に言った。
「ですが、ワタクシからアドバイスを幾つか」
「アドバイス?」
「そうです。まず、歌術はあまり使わない様にした方が宜しいです」
「どうして?」
「外の世界、人間界はアトランティンスとは違います、歌術を使う時に使用する力とそれに因る反動がアトランティンスに比べて大きくなります」
「それで?」
「連続使用または長時間の使用は身体に様々な悪影響を与えます。例えば身体に激痛が襲ってきたり、突然眠ってしまったり色々ですが、最悪身体が動かなくなったりします」
「ふ〜ん……で」
「はい?」
「アドバイスはありがたく聞いとくけど、”本当は何しに来たの?”」
 エルは先程した質問をもう一度した。
「別に何も、偶然通りかかったらエル様が居たので来ただけですよ?」
「嘘! どうせバルの命令で連れ戻しに来たんでしょ」
 エルが疑惑を込めた視線でロ−ラを睨み付ける。
「本当ですよ、ほら、今お使いの帰りなんですよ」
 ロ−ラは言いながら、置いていた荷物を胸元に掲げて笑って見せた。
「本当に偶然なの?」
「疑り深いですね、もう少しお話をしていたいんですけど、だいぶ時間も経ってしまいましたのでこれで失礼します」
 ロ−ラは言い終わると荷物を持って立ち去ろうとした。
「ロ−ラ!」
 立ち去ろうとするロ−ラをエルは呼び止めた。
「何ですか?」
 ロ−ラは小首を傾げながら訊ねた。
「バルに結婚はしないけど、今までどうりの付き合いはしてあげるって、……それから、アドバイスありがとう!」
 エルはロ−ラに向かって大きく手を振った。
「はい、受けたまりました。エル様、お元気で」
 ロ−ラもエルに応えて手を振り返して、歩いて行った。
 エルは視界からロ−ラが消えるまで手を振っていた。




 ――ガチャガチャ。
 青山篤志は金属が擦り合う甲高い音で目を覚ました。
 目を覚ましてすぐ頬に冷たい感触があった。どうやら作業をしている中に机に突っ伏して眠ってしまった様だ。
 その証拠に目の前のモニタ−には所狭しとアニメ−ションが映っている。
「う−ん」
 手を上に伸ばして伸びをしようとしたが身体のあっちこっちで骨が鳴った。それを気にせず伸びをした。
 一息ついて時計を見る、時計は十一時を指している。
 先程から音がしている所を見ると、ドアの鍵穴がガチャガチャ動いているのが見えた。
 ――誰だろう?
 自分の疑問を確かめるためにドアに近づき鍵を外し唐突にドアを開けた。
 ゴンッ
 何か固いものに当たったらしく、鈍い音がした。ドアをもう少し前に進ませ様として更に押してみた。
 ゴンッ!
「―――」
 今度は鈍い音がした後、声にならない悲鳴を聞いた様な気がしてドアの隙間から覗いみた。
 そこには、見慣れた女の子が唸りながら額を押さえて座り込んでいた。
「留美、何してるの?」
「し〜ちゃん」
 女の子が額を押さえてこちらを恨めしそうに見上げている、気のせいか女の子の目尻に涙が溜まっている様にも見えた。
 揃たセミロングの髪を止めてるバンドから果実の甘い香りが漂った。
 服の袖が余っているらしく手の甲迄隠している、その仕種は、篤志の目から見てもその女の子が自分と同い年とはたまに思えなくなる程幼く見えた。
 年齢より幼く見える女の子、坂城留美を見やり、篤志は手をかした。
「また何もないとこで転んだの? もう少し慎重に歩きなよ」
「違うの! 転んだんじゃないの、ドアにぶつけられた!」
 留美は手をかりながら立ち上がり、反論した。
 先程の鈍い音はどうやらドアを留美にぶつけた音だったらしい。
 篤志は妙に納得した後、何気ない口調で謝った。
「ごめん、気が付かなかった」
「嘘、一回じゃなくて、二回もぶつけたでしょ」
「うっ……」
 篤志は言葉に詰まった。
「二回ぶつけたでしょ」
 留美の質問は続く。
「ぶ・つ・け・た・で・しょ」
「………」
 確かに鍵穴が動いた時、留美だと思ったが、いつも留美が来る時間と違うので違う人だと思ったので”故意”に、二度ぶつけたのは事実だ。
 どう応えようか考えていると、いきなり留美の声のト−ンが変わった。
「痛かったんだから」
「えっと―」
「ものすごぉく、痛かったんだから」
 留美は今にも泣きそうな顔で睨んでいる、だが幼く見えるので怖くなくむしろ可愛く見えてしまうのを本人は気づいてない。
「ごめん、悪かった」
 篤志は降参して謝った。
「じぃ−−−」
「何?」
 留美は何かを待っている様にこちらを見ている。
「じぃ−−−」
「???」
「じぃ−−−」
「はぁ、わかった。どうしたら許してくれる?」
「撫でて!」
「はっ?」
 留美の言葉に思わず聞き返してしまった。
「だからぶつけたとこ撫でて」
 留美がいまか、いまかと待っている。
 何を言っても聞きそうにないので篤志は諦めて留美の頭を撫でる事にした。
「ほら、頭だして」
「うん!」
 留美は満面の笑顔を浮かべて頭をこっちに向ける。
「し〜ちゃん」
「何?」
「乱暴にしないでよ」
「ナンデソンナコトユウノ?」
「何となくそんな気がしたから。後、何で外人さんの真似してるの?」
 幼馴染はこんな時ふびんだ、長年の付き合いから何をやろうとしてるかがわかってしまうから不便だ。
 留美の忠告どうり乱暴にせず優しく撫でた。
 なでなで
「うみぃ〜」
 留美は幸せそうな顔をして撫でられている。
 なでなで
「もう良い?」
「う〜、あと少し」
 なでなで
「はい、お終い」
「もう?」
 留美が残念そうな表情で僕を見る。
「腕が疲れたし、何より朝ご飯食べてないからもう駄目」
「クスクス、そうだね、じゃあ先に下行って用意しとくね」
「たのむよ」
「うん、たのまれたよ」
 そう言って留美は階段を下りて行った。
 篤志は部屋に戻り着替えてから、一階のキッチンに向かった。
「し〜ちゃん、今日は洋食だよ♪」
 僕がキッチンに行くと留美が朝ご飯の用意をしていた。
 テーブルの上には留美の言ったとおり何種類かの料理が並んでいる。
 ミートソースのスパゲティ、ポテトサラダ、牛乳がたっぷり入ったコーヒー、茶碗蒸等、……一部洋食ではない物も雑じっているがそれは問題ないだろう、問題なのは。
「留美、いくらなんでもこれは多過ぎない?」
「お昼ご飯も一緒に食べようかと思ったんだけど、し〜ちゃんはいらないの?」
「僕は食べれるだけ食べるよ、それじゃあ」
 篤志の声を合図に篤志と留美は手を合わせた。
「「いただきます」」
 篤志と留美はまず冷めたら美味しくない物から食べはじめた。
「ねえねえし〜ちゃん」
「何?」
「どうしてお部屋に鍵掛けてるの? し〜ちゃんに用事がある時、開かなくて困るんだけど」
「人を入れたくないから鍵閉めてるの」
「人に入られたら困るって……し〜ちゃんもしかして……」
「もしかして?」
「え、えっちな本が置いてあるの?」
 留美は恥ずかしそうに顔を赤くしながら聞いた。
 ガタンッ!
 この幼なじみはいきなり何を言いだすんだろうか?
 テ−ブルには料理が並んでいるので突っ伏す事もできず僕は古典的な方法、椅子からずり落ちた。
「イタタタッ……」
「あれれ? し〜ちゃんどうしたの」
「何でもない、それよりそんな事誰に聞いたの」
「えっ? トウカちゃんと観季ちゃん後臣君が男の子ならみんな持ってるて言ってたよ」
 僕はここに居ない友人たち、途亜野姉弟と友人を恨んだ。
「もう僕も子供じゃないから勝手に入られるのが嫌なの、それに開いてると父さんが勝手に入ってくるから閉めてるの」
「ふ〜ん、そうなんだ」
「そうなの、にしても何でそんな事言ってたの?」
「トウカちゃんと観季ちゃんに、なんでし〜ちゃんは部屋に鍵掛けてるのか相談したら教えてくれたの」
「教えてくれたのって、あいつらは」
 僕は脱力したと共に、途亜野姉弟と観季が喜々として教えてるのが頭に浮かんだ。あの友人たちにはいつか借りを返さなければいけないと思った。
 留美はまだ赤い顔のまま聞いてくる。
「それでし〜ちゃんは持ってるの?」
「持ってるのて何を?」
「だ、だからえっちな本」
「………」
「し〜ちゃん?」
「そ、そんな事はおいといて今日は何しに来たの?」
 僕は急いで話題を変えるために留美の今日の予定を聞く事にした。
「し〜ちゃん、持ってるんだ」
 留美は更に顔を赤くして呟いたが無視する。
「僕はぶらぶらするつもりだけど留美はどうする?」
「う〜んとあれ」
 そう言って留美はリビングにある機械を指す。
「占いで決めるの?」
「うん! だからはい」
 そう言って留美は僕に手を差し出す。
「留美この手は何?」
「百円頂戴!」
「……一応聞くけど何で?」
「だって私お金持ってきてないもん」
 留美は出していた手を仕舞い、ポケットを叩いてみせる。
「ねっ……」
「ねっ、じゃないよ」
 幼なじみは、断れるとは思ってないらしく、屈託のない笑顔で言ってくる。
「くれないの?」
 留美が悲しそうな顔をする。よくもここまでコロコロ表情を変えれる物だと妙な所で感心してしまう。
「あげるからその前にご飯を食べちゃおう」
「うん、わかった」


「し〜ちゃん、お片付け終わったよ〜」
「ご苦労さま」
「ごほうびは?」
 僕は留美が食器を洗ってる間に財布を取って来たので、その中から百円玉を取り出す。
「はい、百円」
「ありがとう、じゃあするね」
 留美は僕から百円玉を受け取ると機械に近づいて行った。
 あの機械は両親、特に母親が力を入れて作った占い機だ。
 結構当たるのはいいが使うたびにお金がいるのが痛い、一体何のために作ったのか考えていると不気味な重低音が機械から聞こえてきた。
「留美どうしたの?」
「し〜ちゃん、これ」
 留美は半泣で機械のモニタ−を指している。
「どれどれ」
 篤志は機械に近づきモニタ−を見た。
「え−っと、大凶、人生最大のピンチ! 恋のライバル登場の予感。それから、彼氏とデ−トをすると運気が上がるかも、ラッキ−アイテムは食べ物。何これ?」
「彼氏だなんて、えへへっ〜」
 留美は照れたように頬を押さえている。
「? 留美、印刷はどうする?」
「して」
「わかった」
 返事をして、機械に占い結果を印刷した紙を出させた。
「はい」
「ありがとう、う〜やっぱり大凶だ」
 どうやらいちまつの希望を持っていたらしいが、見事に玉砕されたらしく唸ってる。
 僕はそれを無視してもう百円だし機械に投入する。
「あれれ? し〜ちゃんもやるの?」
「まあ、たまにはね」
 言いながら画面を操作し自分の名前を選択する。選択した途端、先程と違い軽快な音がした。
「う〜、し〜ちゃん良いなぁ」
 後ろから覗いていた留美が恨めしそうに呟く。
「大吉、今日、出会う人があなたの人生を変えてしまうかも、海まで歩くと良い事あるよ、ラッキ−カラ−はオレンジ、か」
 僕は結果を印刷せずに機械の電源を落とした。
「僕は出掛けるけど留美はどうする?」
「私も付いて行っっていい?」
「別にいいけど面白くないよ?」
「それでもいいの」
「じゃあ、用意して来て、僕も準備するから」
「うん、わかった」




「ハァ、ハァ……」
 身体中に痛みが走る。気を抜けば倒れてしまいそうだ。
「ハァ、ハァ……」
 おまけに身体から力が抜けていく様で。全く力が入らない。
 多分これがロ−ラが言っていた反動だろう。
 ギュルルルゥ――
 どうやらお腹も減ってる様だが痛みと脱力感しか感じられない。
「ハァ、ハァ……」
 だけどこんなとこで倒れる訳には行かない、私にはやりたい事があるのだ。
 ドサッ
 頬に固い感触があたった。足が絡まり倒れてしまったみたいだ。
 起き上がろうと腕に力を入れたが力が入らない。
 意識が朦朧としてきた。
 駄目だ、ここで眠ってしまっては駄目だ。
「――――――――」
 誰かがワタシに呼びかけてるが何を言ってるのか聞こえない。
 ワタシは声を掛けてきた人物を見ようとしたが視界にはその人物の顔がぼやけて見えるだけだった。
 ワタシは最後の力を振り絞り魔術を使った。
 成功したかどうかわからない内にワタシの意識は何処か遠くへと消えて行った。




「ハァ、ハァ……し、し〜ちゃん、どうしたの?」
 留美が息を切らしながら追いかけて来るが今は構ってる余裕は無い。
「ハァ、ハァ」
 何で走ってるんだろう?
 呼ばれてるから、
 呼ばれている? ダレに?
 わからない。だが、ダレかに呼ばれてる!
 ほおておけば良いのに、頭の片隅で声が聞こえる。
 どうせろくな事にならないのに、声はなおも続く。
 うるさい、僕は声が聞こえない様に呼ばれている所に意識を集中させる。
 あと少し、
 あの角を曲がれば
 そこには幼女が倒れていた。
「おい、大丈夫か?」
 僕は急いで少女に駆け寄り声を掛けた。
 声が聞こえたらしく、少女は薄く目を開けた。
 僕はその瞬間、息をのんだ。
 表情は青白くなっているがその瞳は、透き通るような綺麗なオレンジ色だった。
 瞳に見とれていると少女の口元が微かに動いた。僕は急いで口元に耳をかたむけた。
 しかし、口元が動くだけで何も聞こえない。それもすぐ動かなくなり少女は再び目を閉ざした。
「おい、しっかりしろ!」
 もう一度声を掛けるが反応が無い、そのかわり辺りに間抜けな音が響いた。
 ――キュルルルゥ
「……もしかしてこの娘、お腹が空いて倒れたのかな?」
 おもわず呟いてしまったがその考えをせていする様にまた少女のお腹が鳴った。
 ――キュルルルゥ
「全く、人騒がせな……」
 少女を抱えて立ち上がると丁度留美が駆けつけた。
「ハァ、ハァ……し〜ちゃん、いきなりどうしたの?」
 留美は一旦言葉を切り、こちらを見た。
「あれれ? その娘どうしたの?」
 先程少女が倒れていたとこを指さし、
「そこで、拾った」
 留美は目をパチクリして僕と少女をみて暗い顔をした。
「そっか、し〜ちゃんはロリコンさんなんだ。それでとうとう犯罪に――」
 僕は少女を抱えたまま、留美に近づき拳を下げた。
 ゴンッ!
「いたいよ〜、し〜ちゃんいきなり何するの?」
 留美は頭を押さえて半泣で見てくる。
「何するのじゃないよ、留美こそ何考えてるの?」
「だからし〜ちゃんが自分の欲望を満たす為に犯罪に手を出したんだな−って、違うの?」
 僕はもう一度拳を上にあげ留美の頭に下ろした。
 ゴンッ
「う〜、いたいよ〜、し〜ちゃんがまたぶった」
「全く、僕はそんな社会不適合者じゃないよ、この娘がそこで倒れてたの」
「あれれ? 大変だよ、早くお医者さんに連れてかないと」
「それより留美、食べ物を幾つか買ってきて」
 言いながら財布からお金を取り出して渡す。
「あれれ? し〜ちゃんもうお腹空いたの?」
「違うよ、この娘どうやらお腹が減りすぎて倒れた様なんだ」
「わっ、そうなんだ。それじゃあ、この先の公園にいてね」
「わかった。それじゃあ頼んだよ」
「うん、頼まれたよ」
 そう言って留美は来た道を引き返していった。
 僕は少女を抱えた状態から背中に背負う状態に変え留美に言われた様に公園に向かって行った。
 公園に着き少女をベンチに横たえてから、改めて少女の顔を見た。
 可愛らしい少女だ。
 先程見た透き通るようなオレンジ色の瞳、日本人離れした顔だちに、恐らく地毛であろう淡い青色の長い髪――西洋人形みたいな少女だ。
 ――ザッザッ
 不意に足音が聞こえてきた。
 留美が戻ってきたのかと思い視線を足音がした方に向けた。
 そこには見知らぬ女性が立っていた。
「こんにちは」
「こんにちは」
 女性が挨拶をしてきたので僕も同じように挨拶を返した。
「良い天気ね」
 女性が空を見ながら言う。
「そうですね」
 僕は女性の意図は分からないけど留美が戻ってくるまで付き合うことに決めた。
「こんな天気の日は日向ごっこか散歩でもしたくならない?」
「そうですね、僕も今、連れとブラブラしてます、そちらは?」
「ボク? ボクも散歩。そっちはもしかしてデ−トかな?」
 女性は少女を指しながら聞く。
「違いますよ、この娘は道端に倒れていたのをここまで運んだんです」
「へぇ〜、優しいんだ」
「取り柄ですから、それに女の子を道端に倒れたままにしとくのはどうかと思いますしね」
「そうだね、そうだ君の名前教えてもらえるかな?」
「良いですけど何故?」
「出会った記念にそして再会を願って」
「篤志です。青山篤志」
「ボクはラティル。バイラティラル・フィラ−」
「日本人じゃないんですか?」
「そう異人さん、篤志君は日本人だよね」
 異人、古い言い方だな。
「良かったら何処の人か教えてもらえますか?」
「良いけど、何処かわかんないと思うな」
 ラティルが困ったように笑う。
「それでも良いです」
「それじゃあ教えてあげる。――――――」
「え、何処ですか?」
「ごめん、教えてあげたいけど時間がきちゃた」
「時間ですか?」
「そう時間。その娘、エルが目を覚ます時間」
「えっ?」
 今のこの娘の名前?
「ちょ、ちょっと――」
 質問をしようとするが意識が遠くなっていく。
「エルが起きたら力になってあげてね」
 女性の言葉を最後に僕の意識は消えていった。


「………し〜ちゃん、し〜ちゃん」
 留美の掛け声と身体を揺すられる振動で僕は意識を戻した。
「留美、今ここに誰かいなかった?」
「えっ、し〜ちゃんと、この娘以外誰もいなかったよ」
 とゆう事は先のは夢?
「し〜ちゃん、とりあえずお弁当二つと飲み物買ってきたよ」
 留美は言いながら全国展開している某コンビニの袋を抱えて見せた。
「うん、ありがとう」
「それとこれお釣りとレシ−ト」
「う、う〜ん……」
「あ、気がついたみたい」
 留美が言ったとおり少女が少し身をよじて目を開けた。身体を起こして辺りを見渡した後、僕等に気づいたようで留美と僕に目を向けた。
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
 僕はあの透き通るようなオレンジ色の瞳に魅了されながらも何とかそれだけを尋ねた。
 それに対して少女は、
「―――――――」
 少女の声は明るく透き通るような綺麗な声だった。しかしそれは聞いた事がない言語だった。
 僕と留美は顔を見合わせた。
 少女は何かを考える仕種をした後、おもむろに僕に近づいてきた。
「な、何?」
 日本語が通じ無いかも知れないが尋ねてしまった。
「―――――――」
 どうやら少女は日本語を理解はできるが喋れないようだ。
 なおも少女は僕に近づいてきた。
 そして、少女は僕の口を自分の口で塞いだ。
「うっ……」
 柔らかい、そう思うまもなく舌が口の中を舐め離れた。
 横目で見ると留美は声も出ない程固まっていた。
「あ−、あ−」
 少女の言葉が低くまた日本語に近くなってるのを頭の冷静な所で感じていた。
 少女は今度は留美に近づき僕と同じようにキスをした。
「んっ……ぅぐ……んっ」
 何やら抵抗しているらしく僕より時間が長い。
「ぷぅ……はぁ」
 少女と留美の唇が離れるがその間に唾液が糸を引いていた。
 その光景は僕の目には、ひどくいやらしくうつった。
 少女は口をモゴモゴ動かした後、小声で何か呟いている様だが声が小さくて聞き取れない。
 留美はキスされたのがよっぽどショックだったらしく俯いて何やらぶつぶつ呟いている。
 おもむろに少女が口を開いた。
「えっ−と、いきなり変な事をしてごめんなさい。それと出来れば何か食べ物貰える?」
 驚いた事に少女の言葉は流暢な日本語になっていた。
 そして、やはりその声は、明るく透き通るような綺麗な声だった









あとがき
今回から“誰も”やってない様なので対話形式にします(笑

Arika 「とゆう訳で執筆担当のArikaです」
エル 「ヒロインその一のエルです」
留美 「ヒロインその二の留美です」
Arika 「それじゃあ詳しい自己紹介お願いします」
エル 「う〜んワタシは初期設定とほとんど変わらないからそっちをみてね」
Arika 「エルちゃん凄くアッサリだね、んじゃあ気を取り直して留美ちゃん自己紹介どうぞ」
留美 「その前のにArikaさん質問があるんですが良いですか」
Arika 「うみ、何?」
留美 「どうしてわたしが幼いんですか!」
Arika 「えっ、その理由は話が後半になってからわかるよ〜」
留美 「まあ良いです、わたしもエルちゃんと同じ様に“幼い”以外は初期設定とほとんど変わりません」
Arika 「え〜、二人とも随分アッサリしすぎだよ〜」
エル 「Arikaかが悪いんでしょ、ほとんど設定変えてないんだから」
留美 「そうだね、ローラさんやラティルさんは変えてるのに」
 グサッ
エル 「そうね、そのくせ二話と三話に、とむはちさんのに似たのが出てくるし」
 グサッ、グサッ
Arika 「ひどいよ〜、ひどいよ〜、いじめだよ〜」
エル 「しかも最後のは何? 変に描写が凝ってるし」
Arika 「う〜、手元に他の参考資料がなかったんだよ」
留美 「だからってあれはどうかと、それにわたしまでされてるし(泣」
Arika 「だって篤志君だけじゃ何か変かと」
エル 「へたっぴ」
 グサッ
エル 「おまけに本当だったらもう少しあったのにあんなの入れたせいで途中までしか描けなくなるし」
 グサッ、グサッ
Arika 「うわ〜ん、エルちゃんの虐めっ子」
?  「あとがきで何ページ稼ぐ気だコラ」
エル 「あっ、相方のクリア!」
クリア「誰が相方だ、誰が」
Arika 「く〜ちゃん助けて〜」
クリア「お前が未熟なだけだろう」
Arika 「ガーン」
クリア「まあ後書きからは抜けさせてやる」
Arika 「えっ、ほんとわ〜い」
エル 「一寸、敵前逃亡は士道不覚悟よ」
留美 「この場合それは違うような」
 ガシッ(何かがはまる音
Arika 「く〜ちゃんこれ何?」
クリア「見て分らないか首輪だ」
Arika 「それはわかるんだけど、何でこんな物付けられるのかな〜?」
クリア「そんなの逃さない為に決まってるだろ(爽やかに」
Arika 「逃さない為って? (汗」
クリア「小説応募が間に合わないからって開き直ってる馬鹿にお仕置きする為だよ! 折角、今井さんも応援してくれたのに」
Arika 「いやぁ!」
クリア「さあ、キリキリ歩け」
 ズッズッズッズッ(引き摺られて行く音
Arika 「いやぁ! お仕置き怖いよ〜お外に出たいよ〜」
 キィ、バタン
エル 「あ〜あ、連れていかれちゃた」
留美 「エルちゃんどうする?」
エル 「とりあえず執筆担当が居なくなったので次回の予告いって見よ〜」


 ふとした事から出逢ってしまったセイレーンの少女エルと篤志。
 篤志達に食べ物を貰ったお礼に良い物を見せてあげると言われて行った、海で篤志達が見た物とは?!

 次回 第二楽章  事件は血の色朱色


エル 「それでは次回までさよなら」
「「ゴーイングマイウェイ」」


 余談だがArika が閉じ込められた部屋からは悲鳴が聞こえたと言う例えば
「く〜ちゃん痛いのはヤダヨ〜」
「ソコ違う!」など
 それは又別の話。

結論

徹夜した後にあとがきは書く物じゃない(笑
因みに一部ノンフィクションでお送りしました〜
 苦情などはコチラに→araka002000@yahoo.co.jp


 戻る     第二楽章

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